Wanna be stay with you

 夕凪の 中で 思い做したのは 何時迄も 彼の方の側にいたいと 思い抱いていた あの頃    此処に 一人残って 滲んだ涙さえ 凪に砕かれ 今は何を思い做すか
朝焼けに紅差す空を見るとも無く 窓の外を眺め遣り、小さく息を吐く。微かに白燻る呼気が薄く開く硝子窓を霞め染める。 冷涼な外気に凍てついた義眼に水滴が張り付き、目の端より ほろり と溢れゆく。 その冷たさに身震いし、ニンジャは冷えきり白褪めた指で目尻をなぞった。 義眼の表面に紅差し指を這わせ、冷露を拭う。そしてその指を口元に寄せると、指の付け根に伝った雫を舌先で搦め捕る。 細く形の良い、桜貝の様な光沢の紅差し指の爪に朝焼けの浅緋が滲み、妖やかに輝いた。  …漸く 慣れたのは 自分は結局捨てられたという 絶望感に、なのか  それとも それなのに未だ 彼の方に想い囚われるこの身を 愛しいと言ってくれる 貴方と共にいることなのか  彼の方への想いを殺し 飼い馴らされるつもりだったのに 貴方から 愛しいと言われる 快さに 慣れ     …この心から 彼の方が薄れてゆくのに 貴方から 愛しいと言われる 心苦しさに 慣れ   …背後に馴れた気配を感じても 振り返りもせず そんな甘えさえ許される 今に 慣れ   「…何を 見ている?」 振り返らないまま、背後から抱き竦められ、その心地良さにゆるりと目を閉じた。 「…別に 何も…」 僅かに振り返り 宵藍 焦香 深緑 … 顔を覆う覆面に手を掛け、覆面越しに緩く口付ける。    今 自分を抱く この腕が 現実、と…  思い成せるまでは 苦しかった、と 優しい貴方には 伝えられない  強いて言うなら 見つめていたのは 彼の方と ずっと共にいられると思い做していた 今は遠き あの頃を
眼前に広がるのは 何処迄も続くかの様な 寂寥の荒野 明日の有様に疑いも持たず ただ 何時迄も貴方の側にいるのだと 信じて 思い做して 『…何を 見ている?』 冷気に凍てついた深紅の義眼に触れられ、ニンジャは躱す様に身を竦めた。 『…別に 何を見ていたという訳では…』 霞墨色の瞳で、輝く鎧に身を包んだ目の前の男を見上げる。 怖気奮う様な威圧感と、それすらも凌駕する焦れる様な愛おしさ…瞳が揺るぎ、僅かに身震いする。 それを見て取ってか、男…悪魔将軍がニンジャを軽く抱き寄せた。 『お前は 私だけを見ていれば良い』 『…は…』 耳元で囁かれ、躯に落ちる声にさえ身悶えする。金の髪に顔を埋め、掠れる声が言葉を成さない。 ニンジャは固く目を閉じると、将軍の背に腕を回して躯を預けた。 『…ふ、可愛いな、お前は…』 くッ、と揶揄う様な笑いを喉に張り付け、将軍はニンジャの躯を応じる様に抱き締める。 そのままニンジャの着衣の襟元の袷から手を差し入れ、鎖帷子の金具も意味を成さぬ玩具の様に外してゆく。 『あ…ぁ…』 露になった胸板に指を這わされ、零れる様な甘い吐息がニンジャの唇から溢れる。 震える指で きゅ と将軍の金色に輝く髪を掴み、ニンジャは掠れる声で将軍の耳元に唇を寄せた。  いつもと 同じ言葉を 震える声で 紡ぐ  応えなどは要らないのだ 縋りたいのは 己だけだから それが赦されさえすれば 『…ずっと 拙者を お側に 置いて 下さいますな…?』 『………』 そしていつもの様に 問いかけには答えず 黄金に輝く冷たい仮面を外し 現れるのは口の端に張付けた笑み 赤銅色の肌に 精錬された肉体 闘神と崇められていた正義の神… 憎しみに捕らわれ悪に染まり 堕ちた今も尚その輝きは失われない  自分を抱き締めているのに 自分を見てはいないその心 だけど側にいられるだけで良かったのに  …ささやかだと思っていた願いなのに それすら叶わない 決して 応えを下さらなかったのは あれ程に憎しみおうていた筈の弟御を 心の底で愛しておられたからなのか…  本当に 愛していたのだと 今更虚空に声を投げ掛けても 応えは無い  彼の方は 決して応えを下さらなかった それで良いと 思い込んでいたのだ  愛されたかったと 愛されたいと 認めて 伝えられていれば 何か変わったのか  募る想いだけが 澱の様に 心の奥底に蕩熔うのを 気づかないふりをする
「…ニンジャ…」 耳を食む様に唇を寄せられ、ニンジャは小さく身を捩った。 「…如何された アタル殿…」 自分を抱き締める腕に応じる様に、アタルの背に腕を回す。 「私だけを 見ていろ…」 冷気で雫曇る義眼に口付けを落とされ、ニンジャの頬に涙の様な水滴が つ と伝う。 「…ずっと 拙者を 側に 置いて くれるのなら…」 アタルの胸板に崩折れる様に頬を寄せ、静かに呟く。 「…お前が それを望むなら 永久にでも 共に」 アタルはニンジャの手を取ると、紅差し指の付け根を吸い上げる様に口付けた。  指の付け根に 浮かんだ朱は 愛の盟約の輪の様で  ニンジャは口の端に薄らと艶やかな笑みを浮かべると その朱の跡に紅の舌先を這わせる。 「 … なれば 拙者の 忠誠も 誠心も …愛さえも 此の身総てを 貴殿に捧げよう… 」   此の身は 忍の身なれば 誰かに寄り添い その影として 生きる故  寄せても還らぬ 想いより 寄せられる 想いに 応え 共に有りたい  朝朗けの 中で 思い做すのは 何処迄も 貴方について行こうという 己の 前途を   此処に 貴方と二人 比翼の鳥の様に 寄り添い 共にあらんと 思い做し    彼の方の面影を 心の奥へ 押し殺し 貴方の姿を 灼き付け 心に想う     ふ と滲んだ涙を気取られぬ様にアタルの胸板に頬を寄せ、ニンジャは静かに目を綴じた。  __________________________________________________ …アタニンですよ?アタニンですってば←何言い張り。 エロも無いし相思相愛でも無 次回は取り返しの付かない程のエロを←それもどうか。 14/MAY/2004 --------------------------------------------------

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