Unknown Motives
この手で 息の根を 止めて遣ろうと 確と 思い做し
その為に 時空まで 遡り … 全ては 出会う為だけに ?
新世代正義超人が過去に向かうと聞き及び、其れに乗じ潜み過去に向かった。各々思惑はあるものの、表向き共闘する素振にて。
過去の世界で、新世代正義超人を薙ぎ倒し、そして出会った自分より年若いザ・ニンジャは悪魔超人だった。
しかもその中でも悪魔騎士と呼ばれる程の凶悪な超人で、雰囲気からして未来の彼とはその存在を全く異にしていた。
彼もまた、新世代正義超人共を木っ端の如くに蹴散らし、そしてハンゾウの前に立ちはだかる。
『ほぉ…お前は他の者よりは使えそうだな…?』
『俺は、お前を殺す為に此処に来た…じわじわと苦しめ抜いて、楽には死なせないぜ、ニンジャよ』
『ふん、御託を並べる前に掛かって来るが良い。それとも、喋っておらんと怖気震うのか?』
弱い犬程よく吠えるしな、とニンジャは嘲る様に口の端を引き上げる。
『抜かせ!お前こそ俺に殺される段になって命乞いした所で容赦はしねぇぞ!』
ハンゾウは妖腕刀を露にすると、その刃先に舌を這わせ、ニンジャに毒吐く。
… そして 闘いの火蓋は切られた …
『…く、何て…強さだ…』
数十分も経っていないであろうが、ニンジャの技に圧倒されたハンゾウは、文字通り地に伏していた。
息も乱さず、ニンジャはハンゾウの傍らに屈み込むと、懐から匕首を取り出し、ハンゾウの顎に当てる。
『…ふん、御面頂戴、か…このまま、嬲り殺しにしてやろうか…?』
ハンゾウの頬に冷たい刃を滑らせ、薄く皮膚を切り裂いてゆく。鋭く光る切っ先に滲む紅が、映り込むニンジャの顔を染める。
『こ、この野郎!殺すんなら、一息に殺しやがれ!!』
怒鳴るハンゾウを冷静に見下しながら、ニンジャは にやり と 笑った。
『…ふ、殺しはしない…お前は、なかなかに楽しませてくれたからな…無聊の慰めには成ったぞ…気に入った』
…それに未来とやらにも興味が有るしな、と呟くと、ハンゾウの顎を捉え上向かせる。
『…選ばせてやる…此処で、今直ぐ嬲り殺されるか、それとも…』
『…それとも、何だ…?』
『…何だろうな?』
…ニンジャが薄く口の端を引き上げ艶めく笑みを見せた瞬間、ハンゾウは鳩尾に息が止まる程の激痛を感じ気を失う。
拳がハンゾウの鳩尾に深々と食い込み、肋の軋む手応えに、ニンジャは笑い声を押し殺す様に低く喉を鳴らした。
…気が付いた時は、まだ先にいた場所と同じ場所にいた。仰向けに倒れていた為、背筋が痛む。
鳩尾には未だ鈍痛が有る所をみると、まだそれ程長い時間は経過していないようだ。
「…漸く、目が覚めた様だな」
「?!」
何も無い空間からニンジャが突然現れ、ハンゾウの顔を覗き込む。
「て、てめぇ何のつもりだ!」
「…さぁ?何であろうな?」
ニンジャは揶揄う様に応じ、ハンゾウの両手を取ると、自分の首を包む様に触れさせる。
その肌の、抜ける様な白と、氷の様な冷たさに 思わず身震いしそうになり、ハンゾウは奥歯を噛み締めた。
「殺す為に 此処に来た、か…」
魅惑的な口説き文句だな、と、呟きながらハンゾウの躯に緩く覆い被り、ハンゾウの手に沿えた手に力を込め 薄く笑む。
「……為れば 殺してみるか?」
「!!」
此奴の 真意が 分からない
刹那の動揺と躊躇いを心の底に掻き消し、ハンゾウはニンジャの首筋に添えられた己の手に力を込めた。
程無く、ニンジャの頬が薄ら紅潮して来たが、ニンジャの顔からは笑みが消えない。
「 何故 拙者 を 殺そう と 思 う ? … お前 が … 正義 超人に は … 見えん が な … ? 」
擦れる声で、未だ笑みを浮かべたまま、ニンジャは嘲る様に言葉を継ぐ。
「俺は正義超人などではない…正義超人なのはお前だ、…ったんだよ…」
今が過去なのに過去形で話す事は妙な気がするが、ハンゾウはニンジャの首に手を掛けたまま答える。
「 …ふ … 戯れ 言 を … 」
口の端を きゅ と引き上げ言葉を紡ぐと、ハンゾウの手に添えられていたニンジャの手が ぱたり と下に落ちた。
次の瞬間、ハンゾウの首に凄まじいまでの圧迫感が張り付く。
「ぐっ…!!」
いつの間にか、ハンゾウの手はニンジャの首を放し、ニンジャの手がぎりぎりとハンゾウの首を締め上げていた。
「…刹那程、躊躇ったであろう?…躊躇わなければ、殺せたのにな」
順逆 自在の 術 だ 、 と噛んで含める様に、ハンゾウの耳元に唇を寄せ、囁く。
そのまま、ハンゾウの耳元から頬に唇を伝わせ、仮面の端に歯を立て、仮面を外してしまう。
「……ぅ…!!」
「……"じわじわと苦しめ抜いて、楽には死なせない"…か…」
ニンジャは、突如ハンゾウの首から手を放すと、自分の襟元に手を掛け僅かに指先で肌蹴る。
「為らば躊躇う事など無かろう?」
喉を僅かに反らし、ハンゾウの躯に撓垂れ掛かる。
「此の身が、正義になど染まるものか…」
ハンゾウの胸元に顔を埋め、ニンジャが低く呟く。俯くその表情は読み取れない。
「ニンジャ?」
着崩れる襟元にハンゾウが手を触れ、肩に手を掛けても、ニンジャは抵抗しない。
「正義超人として、お前に仇成した、と言う訳か…」
ニンジャは ゆるり と首を擡げ、懐から匕首を取り出すと、その刀身を ひた と己の胸元に当てた。
「…何を、するつもりだ…ニンジャ…?」
ふ と顔を上げたニンジャは、自嘲する様な薄笑みを浮かべ、言い放った。
「…斯様な、未来など、要らぬわ」
「止せ!ニンジャ!」
匕首がニンジャの胸に食込むまさに寸前で、ハンゾウの手がその刃を止める。刃を止める手から鮮血が吹き出した。
「!!…ハンゾウ…?」
「ぐぅ…」
ニンジャは匕首から手を放すと、血塗れのハンゾウの手を取った。
「…何故、止める…」
「…お前は、俺の知っているニンジャじゃねぇ……俺が、恨んでいる、正義超人じゃ、無ぇから、だ…」
「……本当に、拙者は……正義超人に、なって…しまう、のか…?」
微かに震えるニンジャの手が、だくだくと血が溢れるハンゾウの手を握り締める。
「そうだ。犯罪者である俺を、超人特別機動警察隊のお前がお縄にしたんだよ」
だから殺してやろうと思ったんだ、と ハンゾウは血塗れた手でニンジャの顎を捉え、上向かせた。
「…未来など、知るものでは無いな……」
迂闊に興味を持った結果が此の絶望か、と、ニンジャは昏い声で呟く。
「…お前、本当に悪魔超人なんだな…」
「それ以外何物にも成りえん…」
その言葉を聞き、ハンゾウがニンジャの肩を緩く抱き寄せる。
「…何をする?」
「お前が、気に入ったのさ…お前は、殺したくねぇよ」
「……」
ニンジャは、未だ滾々と血が溢れるハンゾウの手を取ると、懐から微かに金木犀香が馨る手拭を取り出し、傷を縛った。
「…拙者にも、此れ以上お前を傷つける理由は無い…」
肩を抱くハンゾウの腕から するりと抜け出し、その身を虚空に舞わせ 潜める。
「ニンジャ!?」
『…願わくば もう二度と お前に会わない未来で有りたいものだ…』
「………」
虚空を見遣りながら、手に巻かれた手拭に顔を寄せると、微かに蕩熔う金木犀香が ふわり と薫る。
「……所詮 相入れられない 定めか…」
ハンゾウが呟くと、声を掻き消すかの様に突如一陣の風が舞い上がった。
そして そのまま ニンジャの 声も 気配も 風と共に 消え失せた
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うわ何コレ悲恋?!←その前に恋愛成立してません。何故
このカップリングだとこんなんばっかりか?!バカップル
書きたいなぁオイ←主張だけじゃ無くて書けよ。
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