Melting blue
空は快晴、濃水色も軽やかな、秋晴れ。薄く散る白い雲も、時折舞う赤い木の葉も綺麗に映える程、清々とした、そんな空。
「あー…イイ天気だなぁ」
誰がいる訳でも無いのに、思わず口に出して くすっ と小さく笑ってしまう程の 心地良い陽気。
風に揺れる洗濯物の白さえ 何だか 軽やかで…遠くから聞こえる、戦闘機が大気を突き破るソニックブームさえ……
「えぇ?!」
ミートが思わず空を見上げると、真紅の疾風が此方に向かってくる。音速の風に砕けた雲が空に散り散りに融けゆく。
「いッ…イリューヒンッ?!」
サンダルを突っ掛け、表に出ると、爆音と共にイリューヒンが戦闘機から常の姿に戻って着地した。
「ど、どうしたんですか?!」
イリューヒンの突然の来訪に驚きながらも、側に駆け寄り、思いっきり顔を上げてイリューヒンを見上げる。
「……ミート…」
イリューヒンは、ミートの姿を見て一瞬微かに笑みを見せた、が…
「……帰る…」
「えぇ?!」
…いきなり、また変身して飛び立とうとしてしまう。ミートは咄嗟にイリューヒンの足に縋り、それを封じる。
「待って下さいイリューヒン!何か御用が有って態々此方までいらして下さったのでしょう?」
「……イヤ、用なんか無い…済まなかった…」
イリューヒンは、少し困った様な、彼には珍しい曖昧な表情を浮かべると、ミートの身体を軽く抱え、地に降ろす。
「でも、此処を目指していらして下さったのでしょう?」
ミートはイリューヒンの顔を覗き込み、小さく笑みを返しながら問い掛けた。
「……違う…その…何だ…」
「?」
「…サハリンの辺りを飛んでたら…その、天気が良くて…それで…」
「…それで?」
「…その、それで…風も気持ち良いから…ミートを、乗せて飛びたい、と……」
そこまで言うとイリューヒンはまた変身してしまった。
「すまん!お前も用事とか有るよな!イヤ、別にそれだけだ!帰る!」
「待って下さいイリューヒン」
ミートはイリューヒンに呼び掛けると、にっこりと笑った。
「誘いに来て下さったのではないんですか?」
「……」
「忙しくなんか無いですよ?ただ、靴だけ履き替えたいから待ってて下さいね?」
黙り込むイリューヒンに、飛んでっちゃダメですよ?と悪戯っぽく念を押し、ミートは玄関に入っていった。
程無くして、スニーカーに履き替え、ジャケットを羽織ってミートが出て来た。肩から水筒を下げている。
「お待たせしました」
「…本当に、良いのか?」
「どちらに連れていって下さるんですか?」
イリューヒンは、微笑み掛けるミートを抱き上げると、自分の肩口に掴まらせる。
「…蒼ばかりが、有る所だ」
滅多に見られる物ではない、と穏やかに囁き、イリューヒンは空へと舞い上がった。
「此処は、どの辺りなんですか?」
ミートが、イリューヒンの肩越しに下界を見遣りながら問い掛ける。
飛んだ時間は小一時間程だろうに、眼下に広がる風景はあからさまに日本と趣を異にしていた。
「…直に、アナディールだ」
カムチャツカより更に日本を縦に一つ北東に飛んだ位だ、と事も無げに言う。
突然、イリューヒンがミートの身体を肩越しに前に抱え直し、確り抱き締める。
「わぁ!何ですか?!」
「……目を瞑って…確りと、掴まっていろ…」
突然、イリューヒンは地に対し完全に垂直に、天空を目指して速度を上げた。
顔に当たる風の強烈さは、言われなくても目を開けてはいられない程で、息苦しくさえある。
ミートがぎゅっと目を瞑りイリューヒンにしがみ付くと、イリューヒンは静かにその背を撫で付けた。
そして、程無く、風の流れが消えたのを感じたのと同時に、イリューヒンの声がミートの耳に届く。
「…目を、開けて見ろ」
声に応じ、ミートが恐る恐る目を開けると、其処に広がっていたのは……
「わぁ……」
一面の 蒼 … 天空も 眼下に見える一面の海も 総て 蒼 …
空も 海も 同じ蒼で融け合って … 見つめる瞳も 心も 染まりゆきそうな程 何もかもが 蒼 …
「…凄い…綺麗…!こんな空が、有るなんて…!凄い!」
ミートが興奮気味に感動を口にすると、イリューヒンは僅かに含羞む様に小さく微笑んだ。
「…ミートに、見せてやりたかったんだ…」
「イリューヒン…」
「……イヤ、違う…ミートと、一緒に此処を、見たかったんだ…」
突然、ミートがイリューヒンの首に腕を回し抱きつく。
「ミッ、ミート?!」
動揺しながらも、空中でのバランスを崩さぬ様に、イリューヒンはそっとミートの身体を抱き締め返す。
「有難う…本当に有難うございます、イリューヒン…!!…本当に、嬉しいです…!!」
「…そうか…」
「こんなに、素敵な所に連れて来て頂けるなんて…あ!」
ミートは何か思い出した様にイリューヒンの首から腕を外すと、零れんばかりの笑みを浮かべた。
「イリューヒン、ちょっとだけ安定する形状に変身して下さいませんか?」
肩から下げた水筒を持ち上げ、またにっこりと笑う。
「お湯とティーバッグを持って来たので、この綺麗な空の中でお茶でも如何ですか?」
「…あぁ、頂くよ」
イリューヒンはミートを緩く腕に抱えると、ホバリングできる形状の四枚羽根を現出させる。
ミートはイリューヒンの腕の中で、器用にお茶を注れ、イリューヒンに手渡した。
「今、もしかしたら世界で一番優雅なお茶の時間を過ごしてるかもしれませんね」
「…お相手は、俺で良いのか?」
その言葉に、ミートはイリューヒンの腕の中から手を伸ばして、イリューヒンの頬に手を当てる。
「貴方と、で、無ければ…って、何だか、照れちゃいますね…」
含羞むミートの手を取り、イリューヒンも小さく微笑む。
「今度は、連絡して誘いに来るよ…」
その言葉に、ミートが微かに頬を朱に染め、答える。
「いつでも、お待ちしてますから…」
緩い風が蕩熔う空の蒼に包まれながら、薄い紅茶が入ったカップを互いに打ち付け、二人は小さく微笑み合った。
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イリュミですかコレ?←誰に対して問い掛け?イヤイヤ、
何だかイリュミが突然書きたくなって書いたのですが、
こんなエロサイトがイリュミ書くのは冒涜ですかそうで
すかくはぁΣ(吐血)…でもまた書く←ちょっとー?!
21/OCT/2004
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