judge by appearance

何もかもがいつも通り、ブロッケン邸での夜半迄続く酒盛りの席の果てにて。 それは本当に、酒の上での下世話な話題ではあったのだが… 「見た目だけでお願いするなら誰がいいよ?」 すっかり出来上がったバッファローマンがヘラヘラと笑いながら場に質問を落とす。 勿論この"お願い"とはつまり気取れば一夜のアバンチュール…とは言うが、 所詮は"見た目だけで一発やってみたいの誰?"という訳で。 バッファローマンが恋人であるブロッケンJr.を膝に乗せつつ放った言葉に、アタルは はは、デリカシー0だな、と口に出して笑う。 ニンジャは引きつった口元を隠すかの様に酒を煽り、アシュラマンは無言で眉根を顰めた。 しかし意外にもその質問に真っ先に答えを発したのはブロッケンJr.であった。 「見た目だけ?なら俺ジェロニモ!一晩中もふもふしたい!肌もすべすべだし!」 「ああ、お前やたらジェロニモにくっついてるのってそういう…」 恋人から紡がれる別の男の名前に妬くでもなく、バッファローマンは何やら得心したのか うんうんと頷きつつブロッケンJr.の頭を撫でている。 「ジェロニモ…ああ、あのやたら根性有る元人間か」 「サンシャインを負かした男か…確か…拙者一瞬戦った事有るな…」 悪魔騎士二人は知ってるな、位の反応で顔を見合わせ確かにモフモフしてたなと頷き合う。 「そういう言い出しっぺのお前は誰なんだ」 アタルは ブロッケンの見た目一番がお前じゃなくて残念だったな?と揶揄う様にバッファローマンに向けた指先を煽った。 表情は覆面で隠れてはいるものの、その目元は薄りとした笑みを湛えている。 その含みの有る笑みを気に解すでも無く、バッファローマンが軽く考える素振りにて笑みを返す。 「俺?そうだな〜…ん〜…ロビンマスクとかどーよ」 どーよと言われましてもなあ、とこれまた悪魔騎士二人は付き合い的には馴染みの無い名前に、 アラン・ドロン風なんだったっけ?みたいな微妙な反応を返す。 アシュラマンはタッグトーナメントの時に薄ら見てない訳ではないのだがあの場は少なくともそんな雰囲気ではなかった。 「え?そんなモン?顔だけなら、なかなかいないレベルの美形だよな?」 バッファローマンはブロッケンJr.に同意を求めるとブロッケンJr.もうんうんと大きく頷く。 しかしアシュラマンとニンジャからすればそう言われましても知らないしなあ…としか答え様が無いのである。 寧ろ(自分の所業とは雖も)、友情が壊れかけとはいえあの状況でロビンマスクの顔をしっかり見ていたブロッケンJr.とバッファローマンに アシュラマンは少なからず衝撃を受けている…のを気取られぬ様手元の酒杯を呷り卓に置く。 そんな二人にアタルは懐に入れていたメモ帳のその間から一枚の写真を取り出すと、ペラリと目の前でひらつかせた。 「ほら、こんな感じだぞ」 そこには鎧を纏った、総身しとどに濡れそぼり蒼白い顔でぐったりと倒れ込む男性…ロビンマスクが写っている。 「おお…これは…色男で御座るな…」 「…悪くないな…何か死にそうな感じなのが気にはなるが」 ニンジャとアシュラマンの呟きにブロッケンJr.とバッファローマンも写真を覗き込む。 「げえ…っ…」 バッファローマンが写真を見て驚愕の呻きを喉から溢す…のに被せ 「これロビンがアトランティスに負けた時の写真じゃないのか!?何撮ってんだよソルジャー!」 ブロッケンJr.がアタルを怒鳴り付ける。 「えっ…」 ニンジャは写真を取り落とし乍ら 変態だ… と呟きアタルを見遣る…のを見てアシュラマンは 今知った訳じゃ有るまいに、と呟きつつ酒杯に口をつけた。笑い面が笑っていない。 「嫌々違うぞブロッケン。これはロビンマスクが水中戦対応のマスクの試作に失敗した時の写真だ」 聞けば何やらロビンマスクは水中戦が苦手という弱点克服の為に、マスクに呼吸補助装置を付けようとしているらしい。 しかし未だにそれは完成には至らず あのペースだと彼の子供の代まで完成しないねぇ とアタルは手酌で酒を煽った。 それで何でお前はこの写真を とは誰も突っ込まず、場に無言の冷感が白々と入り込んだ が… それを嫌ったかブロッケンJr.がアシュラマンに びっと人差し指を向けた。 「じゃあ次アシュラ!誰だ!見た目だけで選ぶなら!」 指されたアシュラマンは 私か と杯を掌中でくるくる回しながら暫し黙考する。 「見た目だけ、な…ならばテリーマンだな」 意外だな、と言うバッファローマンにアシュラマンは そうか? と事も無げに返す。 「あの張りが有るのにそれでいて柔らかい筋肉はなかなかいい…あれこそ一晩中楽しめる」 「砂、固そうだもんな…」 ブロッケンJr.の呟きにアシュラマンが煽った酒で噎せて咳込んだ。 本当なら此処でアシュラマンに対しサンシャインの話題を切り込んだブロッケンJr.を誉めつつ 口さがなくアシュラマンを揶揄いたいのだが、サンシャイン関係で王子様を揶揄うと後が怖い。 ニンジャはクスクスと笑いながら一瞬バッファローマンと目を合わせ、余計な事言わないでおこう、と視線で念押しする。 「いや、お主幾らテリーマンとの戦いが多いとはいえそんな事考えておったのか」 余裕有り過ぎだ、と言えばアシュラマンは 戦えばわかるさ、と杯を煽った。 その言葉にブロッケンJr.がまたうんうんと大きく頷きつつ、アシュラマンに向け乾杯の様に酒に満ちたグラスを差し出す。 「そうだよな!戦えばわかる事ってあるよな!」 意外なブロッケンJr.の同調にアシュラマンも お、おお ? と杯を差し出し小さく合わせる。 「俺もニンジャと戦ってヘッドバットした時にこいつイイ匂いだなって思ったもん!」 「なっ…!」 そう言いグラスを呷るブロッケンJr.の言葉に、ニンジャは飲みかけていた酒を吹きそうになる。 お前はそんな事考え乍ら戦っていたのかと、あの直後落命した身としては暫し詰問したいが、 ニコニコと悪意など有ろう筈も無いブロッケンJr.の笑顔に、不平の言の葉も唇の内に張り付く。 寧ろお互い重油と血飛沫に塗れた状況で自分の装束に焚き染めた香を嗅ぎ取っていたのかと思うと空恐ろしくもある。 バッファローマンとアタルがブロッケンJr.とは真逆のにやにやと含みの有る笑みを向けて来たのを、 ニンジャはぎらりと睨め付け返した。そして頬が上気するのを気取られぬ様、話題の矛先をアタルに向ける。 「アタル殿の見た目だけ気になるのは誰だ」 ニンジャの質問に、アタルは にっ と笑うとニンジャの頬を撫で乍ら。 「私はニンジャがど真ん中ストライクだからなあ」 途端にバッファローマン、ブロッケンJr.、アシュラマンが囃し立て、ニンジャは赤面しながら口をはくはくと動かす。 「でもそれじゃつまんない!他には?!」 ブロッケンJr.の言葉にアタルは ん〜… とわざとらしい間延びした声を出す。 「ニンジャの他…ねえ…じゃあ、ミスターカーメンかなぁ」 「あーあー、ニンジャとかカーメンとかエキゾチックビューティーが良いのな!」 系統同じじゃねえか!バッファローマンがアタルの背中をバシバシと叩く。 「あー、確かにニンジャとカーメン似てるな!色っぽいのとイイ匂いなのが!」 どちらとも戦ったブロッケンJr.がまた素直な感想を述べる。 深酒に合わせ、自分がど真ん中ストライクだのイイ匂いだのにすっかりノックダウンされたニンジャは もはや目元や項まで真っ赤になって下を向いてしまっていた。 アシュラマンはニヤリと口の端に笑みを乗せつつ お前は? とそんなニンジャに向けて件の質問ー見た目だけなら?を振る。 「…見た目だけ…なあ…」 ニンジャは杯の酒で唇を濡らしながら口ごもり、顔を上げない。 アタルに助け船が欲しいと緩く上目で視線を流し訴える…が… 「ニンジャ、皆のを聞いておいて今更自分は言わないとか…無いよな?」 アタルは涼しい顔で追撃に回りニンジャは苦々しく籠る舌打ちをした。 そして酔いに任せた事にして観念し、口を開く。 「見た目だけ、なら…拙者が気になるのは、キン肉マンだ」 そう言い杯に並々と注いだ酒を一息に大きく煽り、ふぅ と大きく息を吐いた。 「何でだ、あんなブタ面マスクのどこがいい」 アシュラマンは心底嫌そうな顔をして、目の前にそのブタ面マスク超人の兄がいるにも関わらず言い放つ。 「…表面は、そうかも知れんが、あの中身はアタル殿そっくりらしいから…」 あ、とブロッケンJr.が声を上げる。 そうなのだ、あのデザインと本人の性格ですっかり忘れられがちだが、 キン肉王家は美形揃いでキン肉マンもマスクを外せば絶世の美男子なのだ。 とは言えど フェイスフラッシュ越しに微かにしか誰も見た事は無いが… 「アタル殿そっくりなのに、若いとか…多分見たらキン肉マンの代わりに拙者が死ぬ」 「何だこの複雑な気持ちは」 自分そっくりな弟を誉められ嬉しいのか、若い方がいいと言われている気もしないでも無いのか… 「あーあーハイハイご馳走様」 アシュラマンは杯を置き立ち上がると 「私は見た目関係無く馴れ親しんだ奴の方がいい」 と言う訳で 会いたいから 帰る とさっさと出ていってしまった。 「なあ、今の科白、サンシャインに…」 「やめておけ」 バッファローマンがサンシャインに伝えようか、と言うのをニンジャが制する。 あの二人はアシュラが尻に敷いている位のが丁度良い、と言うのに何とも無く納得し頷く。 「じゃ、私達もそろそろ休ませて貰うか」 言うが早いかアタルはニンジャを横抱きにして立ち上がった。 「うぉっ?!」 抱えられた反動で持っていた杯をころりと取り落とし、ニンジャが色気の無い声を出す。 「二階の部屋ならどこでも開いてるぜ〜」 ブロッケンJr.がまだ飲むのか手酌でワインを注ぎながら空いている手をひらひらと煽る。 「お前流石にもうやめておけよ」 ブロッケンJr.を見咎めつつバッファローマンも軽く手を上げ見送った。 そして パタン と乾いた音を発てドアが閉まった、すぐ後に。 「…年上の魅力をじっくり教えてやる」 アタルはマスクをずらしニンジャの唇に触れるだけの口づけを落とす。 その科白にニヤリと笑いながら、ニンジャはアタルのマスクの縁をなぞる様に指を這わせる。 「はっ!酒の飲み過ぎで役に立たんのではないか?」 首に腕を回しクスクスと笑うニンジャの髪を撫で付け乍ら、アタルはゆっくりと長い廊下を歩いて行った。 「みんないなくなったなあ」 ブロッケンJr.が瓶底2cm程残ったワインを酌すらせず直にらっぱ飲みし、空気に晒されぬワインの渋みに思わず顔を顰める。 「だな、もう俺らもお開きにしようぜ」 バッファローマンがブロッケンJr.の手から酒瓶を取り上げつつ、額に口づけた。 「やだ、もっと此処にいたい」 此処、バッファローマンの膝の上でくるりと向きを変え ブロッケンJr.がバッファローマンと正対し顔を見上げながら両頬に手を当てつつ。 「…一晩だけとかじゃなくてずっと一緒がいいのはバッファだから…」 俺はロビンみたいにカッコ良くないかも知れないけど、と言いつつ顔を寄せさせ ずっと 好き と言ってバッファローマンの唇に啄む様なキスをする。 「…俺もだ。ずっと、お前と一緒がいい…」 バッファローマンはブロッケンJr.を緩く抱き締め、深く口づけようとすると…その唇から零れる規則的な呼吸音。 「…ここまで来て生殺しか!」 起きろ、と声を掛けても寝惚けた顔で蕩けた笑みを作るのみ。 「…今夜は勘弁してやるか…」 酒の上での話乍らも、ずっと一緒がいいと言葉と想いは貰ったのだ。 そんな胸元に撓垂れて幸せそうに眠る愛しい恋人を、せめてベッドに寝かせてやろうと バッファローマンはブロッケンJr.をぐっと縦抱きして、いまだ緩い笑みが残る頬に口づけ抱え上げた。 __________________________________________________ 血盟軍が爛れてますね…これ、正義超人バージョンも 書いたのですが結構酷い出来で修正しまくってます… 意外と原作で一切会話無い人達とかいるので… 普段なら頁分けする長さだけれど、区切りが無いので。 18/AUG/2017 --------------------------------------------------

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