his affection/his pureness

宇宙の趨勢をも決すると言われたキン肉星王位争奪戦より暫く後。 各々の陣営はその後解散し、各々が各々の道を歩む中、五つの肉体に宿れる一つの魂とまで言われた、 キン肉星の王兄であるキン肉アタルが結成した超人血盟軍のメンバー達の間には、いまだに親交と友誼が有った。 そんな彼らは、邂逅の地となったドイツ・ベルリンのブロッケン邸に度々集合して、穏やかな時間を共に過ごす。 今は夕暮れの鮮やかな橙色の日の光が室内に満たされゆく、そんな時間である。 「ニンジャ!腹減った!」 屋敷の主、ブロッケンJr.が厨房にて調理に勤しむザ・ニンジャに抱き付きつつ、つまみ食いを始めた。 「食べた分はお主の皿から減らすぞ、ブロッケン」 危ないから調理中に抱き付くなと何度言えば、と独りごち乍ら、ニンジャは皿に料理を盛り付けてゆく。 実はつまみ食いは折込済で、その分まで作っているのだが、そんな事は言わない。 「カカカ、じゃあ此処で自分の分は平らげてしまうか?ブロッケンよ」 これまた厨房に入って来て、スープ鍋のレードルからスープを直飲みしながら、アシュラマンがおどけた。 「アシュラ…お主まで…」 「いや、配膳を手伝ってやろうとしたらまだ料理が出来て無かったからな」 そのまま一緒につまみ食いを始めるアシュラマンとブロッケンJr.に、ニンジャが渋い表情をする。 「おい、バッファ。此奴等をつまみ出してくれ」 ニンジャの厨房からの呼び掛けに応じ、はいよ とバッファローマンがリビングから厨房に来た。 「ほれ、二人とも飯抜きになる前に撤退しとけよ」 そしてブロッケンJr.とアシュラマンを一纏めに抑え、厨房から連れ出して行く。 「全く…」 ようやく静かになった厨房で ふ と一息吐いた所に。 「ニンジャ、手伝おうか」 「ソルジャー…ああ 頼む。その団子にそちらのフライパンのソースをかけてくれ。均等にな」 皿から減らす等と言う台詞とは裏腹に、均等に と態々断り置く彼の生真面目さに、 覆面の下、ソルジャーの口元に何とも無しに笑みが零れた。 ニンジャはソルジャーに背を向ける形で、てきぱきとサラダやスープを準備している。 「その料理は作った事が無いから、旨いか判らん」 「つまみ食いされているんだから旨いんじゃないか?」 ソルジャーの答えに そうかもな、と言いつつ食堂に料理を運び、テーブル上に配膳してゆく。 「料理出来たぞ、着席!」 ニンジャの号令で、全員がテーブルに着く。 「今日の料理は、ブロッケンのリクエストでドイツ南部の料理…ゼン何とかだ」 「Semmelknödel!」 「言われた所で判らんが、パンで嵩増ししたハンバーグ風の団子に、生クリームで似たキノコを掛けた」 「ニンジャは料理上手いのに、説明は毎回壊滅的だな…」 バッファローマンの呟きに、ニンジャは 黙って食え とばかりに無言で指を煽る。 「「「「いただきます」」」」 「はい、どうぞ」 皆が揃った時はきちんと全員で挨拶してから食事を始める。 それはこの館の主ブロッケンJr.曰く、館のルールだと言う事だが、皆特に異論無く従っていた。 寧ろそれを悪魔相手でも通させるブロッケンJr.に、彼の父ブロッケンマンの躾の良さを垣間見る。 「旨いよ、ニンジャ!」 料理をリクエストしたブロッケンJr.が笑顔で言えば、ついニンジャも穏やかな笑みを返す。 「ファーターがいつもムッターの得意料理だって言って作ってたけど、同じ位旨い!」 「そうか、それは良かった」 味見をしたところでそもそも正解を知らぬから、ブロッケンJr.が旨いと言えばこれは旨いので有ろう。 「このkartoffelsuppeも旨い!ちゃんとベルリン風だし!」 「かー…?ああ、このスープか、ちゃんと言われた通り牛肉を入れたからな」 お代わりも有るぞ、とガツガツと食べるブロッケンJr.にニンジャはまるで慈母の如き微笑みを見せる。 「ニンジャは本当に何でも旨く作れるな」 ソルジャーの言葉に、誉めてもお代わりしか出んぞ、と軽口を返しつつ、皆のグラスに水を次ぐ。 「いやぁ、魔界の修行中はニンジャの料理が半月に一遍の楽しみだったからなあ」 「そうそう」 アシュラマンとバッファローマンが懐かしい、と笑い合う。 「半月に一遍?」 ブロッケンJr.の問いかけにバッファローマンが答えた。 「食事の支度は全員の持ち回りでな、将軍様以外13人いるから、大体半月に一度当番が来るんだ。 でも大体の奴は料理できないから、大抵焼いただけの肉とか、そのまま食える果物でな」 「そうそう。サタンがニンジャ連れて来て、初めてニンジャの料理食べた時全員がサタンでかした!ってな」 悪魔達の思い出話に、ブロッケンJr.とソルジャーは興味深げに聞き入っている。 「調理場と言われて焚き火の前に連れて行かれた時はどうしようかとは思った」 こうして和やかな話の尽きぬ中夕食を終え、各々休むなり酒を飲むなり好きに過ごすのが常で有った。 その後は各々好きな様に時間を過ごす。 皆で酒に興じる事も有るが、酒量も趣味も違うから、共にいるからと態々一緒に飲む事に固執は無い。 それでも、各々共に戦った日々より深い友誼や親愛を培っていた。

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