Rapturous heat_2

Rapturous heat_2

 Strelitzia... 橙黄色の花弁を持つ 日本では極楽鳥花と呼ばれる観葉植物 花言葉は『恋する伊達男』  艶やかな花の名を冠するBarは 場末のビルの地下に有った  薄暗い店内に 紫煙燻り 香が焚かれ 快楽と退廃が彩る店内の奥 黒革張りのソファーに独り 身を沈め その人はいた   昼に見かけた 清楚な雰囲気はなりを潜め エナメルとレザーの切り替えが粗野な雰囲気さえ有る着衣に身を包んでいる  目の前に置いてあるKirschwasserの瓶が略空になっているを見るに、相当寄越し召しているのは間違いないだろう… アタルが正面からニンジャに近付くと、ニンジャは一瞬驚いた様な表情を見せたが、その後静かな声でアタルに声を掛けてきた。 「……何か…?」 酒気で掠れる声と、紅に染まった肌が艶めかしく、思わず見入りそうになってしまう。 アタルは緊張を悟られぬ様、呼気を整えながら応えた。 「…隣、良いかな…?」 グラスを顔の横に翳し、努めて軽目の口調で言葉を紡ぐ。 「…あぁ、構わないが…」 応えると、ニンジャは少し躯をずらし、アタルがかける空間を作る。アタルは小さく礼をし、ニンジャの隣に腰掛けた。 一礼を返したニンジャは、アタルから視線を外すと、Kirschwasserの瓶に手を伸ばした。 アタルはそれを制すると、Kirschwasserの瓶を手に取り、ニンジャのグラスにKirschwasserを注ぐ。 「………有難う…」 少し含羞み、小さく呟く様に礼を言うと、ニンジャはグラスに口を付けた。 髪を結い上げた襟元から覗く項の滑らかなラインが、カクテルライトに照らされ、鈍く光る。 その艶めかしさに、思わずアタルは息を飲み、ニンジャに見入ってしまう。 その視線に気付いたのか、ニンジャはグラスを置くと、アタルの顔を覗き込みながら問い掛けた。 「…何方かと、待ち合わせておられるのか?」 この店に来られるのは初めてであろう?と、店内に視線を流す。 「いや、待ち合わせでは無い…何と無く入ってみたんだ」 …勿論大嘘であるが別に今の所誰に迷惑を掛ける訳でも無し、アタルは白々しく応えた。 「…そうしたら、好みのタイプの美人がいたんでね…貴方は、今お一人かな?」 もしお一人なら嬉しいのだがな、とニンジャの目を真直ぐに見詰めた。ニンジャは、小さく笑いグラスを呷った。 そして中身が少なくなったグラスの縁を指で擦り、透明な音を奏で、応える。 「…一人だと申し上げたら…口説いて下さるのか?…なれば一人だとお応えしておくがな…?」 目を伏せると、艶めかしく それでいて何処か寂しげな笑みを浮かべ、ニンジャはグラスの縁から指を離す。 「是非そう応えて貰いたいものだな」 アタルはニンジャの腰に手を回し、抱き寄せた。ニンジャはされるがままに抱き寄せられると、アタルの目を見据えた。 「…貴方は…並木通り沿いの茶寮によく来られておろう?いつも端の席でかけておられるのを見掛けるが…」 巴旦杏を思わせる綺麗な流線の瞳が 酒気で微かに潤み カクテルライトに照らされ 蕩ろく光る… アタルはその目許に指を滑らせると、そのまま紅に染まる頬に手を沿え、静かに耳元で囁いた。 「…貴方も、よく行っているのだろう?」 耳元に掛かる呼気の擽ったさにか、ニンジャは肩を竦めると、アタルの胸に撓垂れかかり、アタルを見上げる。 「あぁ、茶を、嗜むのでな…」  などと会話を交わし乍ら ニンジャは心の底に澱む昏い情念を気取られぬ様 砕心していた  癒し切れぬ乾きを 凌げると思うと 知らず笑みが溢れそうになる  それに この男は … 更に先に思い至った事柄が表情を歪ませそうで、ニンジャは思わず俯き、小さく唇を噛む。 その様子を見、アタルがニンジャの肩を緩く抱え、静かに言葉を掛けた。 「…酔ったのか?」 そして空になったKirschwasserの瓶を除け、ピッチャーに備えてある水をニンジャのグラスに注いで遣る。 ニンジャはその水を一息で飲み下すと、アタルの首に腕を回し、耳元で囁く。 「…あぁ…だから…家まで…送って下さらぬか…?」 そのまま覆面越しにアタルの口元に唇を押し当て、静かに目を閉じる。 「…送り狼になっても構わないと言うのなら、喜んで…」 アタルは緩くニンジャを抱き締めると、口元だけ覆面を外し、軽く口付けを返した。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送