DIPT
布団を噛み、身を縮め、震える腕で己の躯を強く抱き締める。
「…ぅ…は、あ…ぁ…」
総身が、灼かれる様に熱く火照っているのに、流れ伝う冷や汗に、歯の根が合わぬ程の寒気すら覚えている。
猛烈な頭痛と目眩に間断無く苛まれ、心すらざわついて悲鳴を上げてしまいそうだ。
動かす事も覚束無い指を必死で動かし、ぎゅっと目を閉じ消え入りそうな意識を奮い立たせながら電話をダイヤルする。
直通の携帯に とにかく 早く
呼び出し音さえ耳に苦しく、僅かに耳を受話機から離し、応答を待つ。
…頼む…早く…早く 出てくれ…
僅かな時間なのに、どうしようも無い程長く感じる。
『…ニンジャか?どうした?』
漸く聞こえた、耳に慣れた声に必死で縋り擦れる声で呼び掛ける。
「……ぁ… ア タ ル ど の … 助け て … 」
苦痛に息が騰がり、気を失いそうなのに、乱れた心だけは更なる熱を求めていた。
『おい!ニンジャどうした!!』
「…ぁ…」
乾いた喉に、声が擦れ貼り付く。ただ、声を聞けた安堵感に、ぼろぼろと涙が溢れ止まらない。
『ニンジャ!返事をしろ!!』
「………」
…全身にまで疼痛を齎すかの様な頭痛が押し寄せ、ニンジャは意識を手放した…
「…ぁ…」
額に冷たい手拭を当てられた感触にて、ニンジャは意識を取り戻した。
「…気が付いたか」
アタルが、ニンジャの顔に浮かぶ汗を拭き取って遣りながら声を掛ける。
「…アタル、殿……」
ニンジャは、呼び掛けに僅かに応じ、目を閉じたまま己の躯の状態を顧みた。
既に躯を苛む苦痛は無く、ニンジャは総身に力が入らない不思議な虚脱感で、躯が宙に浮いている様に感じていた。
そして、思考に残ったのは、理性の抑制は全く無くなった、純粋な、野性。『これ自体』は予想通り…だったのだが…
ニンジャは小さく笑うと、ゆるゆると躯を起こしアタルにしな垂れかかり、口付けをせがんだ。
「な、ッ、ニンジャ、お前、具合が悪いのではないのか?!大丈夫なのか?!」
電話の後、アタルは取る物も取敢えずニンジャの元に駆けつけた。そこでアタルが見たものは、
汗に塗れ、総身に全く力が感じられない状態で、身を抱え気を失っているニンジャの姿だった。
一体何が起きたのか、このまま目を覚まさないのではないか…
実際ニンジャが目を覚ましたのはアタルが辿り着いて程無くしてからだったのだが、アタルには永劫にも似て感じられた…
ニンジャに覆面をずらされ、唇を重ねられる。薄らとニンジャの瞼が上がり、アタルと目が合う。
「…!!」
ニンジャの瞳を見、アタルは思わずニンジャの肩を掴みその身を引き剥がした。
薄く笑うニンジャの瞳は、潤み、瞳孔が開き切っていた。
相変わらず力は入らないのか、躯を引き剥がされても抵抗はせず、またアタルに凭れ掛かってゆく。
「ニンジャ…お前…」
アタルはニンジャの躯を抱きとめ、顔を覗き込む。瞳孔の開いた瞳からは表情など読み取れない。
しかし口元にはずっと笑みが浮かんでいる。潤んだ瞳をアタルに向け、ニンジャはアタルに身を寄せ囁いた。
「アタル殿…拙者は、壊れてしまったのだ…けれど、もっと、もっと滅茶苦茶に壊して欲しい…」
ぞっとする程艶めいた声で、誘いかけてくる。本当に、壊れてしまったかの様に。
「…ニンジャ…」
「早く…アタル殿…」
アタルがニンジャの躯を強く抱き締めると、ニンジャは甘い喜悦の吐息を零す…